麻疹(はしか)と予防接種

麻疹の流行について
麻疹(はしか)の流行が指摘されています。関東地方から流行がはじまり和歌山でも数人の患者さんを認めているようです。インフルエンザのように爆発的に患者が増えているわけではないのですが、麻疹の感染性は非常に強く、予防接種を受けていない人が患者さんに接触すると高い確率で発症します。もし1歳未満の乳児(予防接種を受けていない集団)がいる保育所などで流行したとすると大変多くの患者がでることになってしまいます。麻疹は治療法がなく、合併症も多く、体力のないかたが感染すると死亡することもある病気なので、感染が広がる前に対処しなければならないのです。

なぜ麻疹が流行したの?
日本では麻疹の予防接種が長い間1回しかありませんでした。(平成十八年からは1歳と就学前の2回となりました)麻疹の流行が多い時は一回接種でもいいのですが、流行が少なくなると予防接種の効果は早くに低下していきます。十年程度は十分な効果を認めますが、それ以降は低下していき感染してしまう危険性がでてきます。今回、大学生の感染者が多いというのもそういうことです。日本以外の先進国(欧米)はもちろんのこと中国や韓国でも麻疹の予防接種は2回接種が当たり前でそれらの国ではほぼ麻疹の流行はおこっていません。日本は麻疹の流行国として他国から恐れられています。

どうすれば感染しませんか?
1歳以上のかたで麻疹の予防接種(麻疹/風疹混合でもよい)を受けていない方はできるだけ早期に接種して下さい。1歳未満のかたは麻疹の予防接種は公費負担では接種できませんが、保育園に通園されている方などで近くに麻疹が流行した場合、生後9カ月以上であれば(9カ月未満では予防接種の効果はほぼない)自費にはなりますが接種を考慮することがあります。医療機関にご相談ください。

予防接種を受けたけど感染しませんか?
こういう質問を近ごろ多くされるようになりました。予防接種を受けていただければ感染は十年はほぼ大丈夫です。2回接種は将来に備えてのことであり、小学生までであれば予防としては十分です。

小学校2年生以上だけど2回接種しなくていいの?
現時点で大学生の予防接種効果が低下してきているということは当然この年齢の方の効果も将来的に低下することが予想されます。現時点で公費負担はありませんが将来に備えて2回接種することは麻疹予防の上で非常に有用ですのでご検討下さい。

検査やワクチンは足りているの?
6月上旬には検査や予防接種が集中したため検査が大幅に遅れたり、予防接種をお断りさせていただいたこともありました。徐々に改善はしているものの現時点ではワクチンの入手がまだ少なく1歳児の接種を優先させていただいております。7月以降は改善される見込みです。

風疹は大丈夫?
風疹につきましても予防接種効果は低下しているようです。特に女性につきましては妊娠中の感染が問題となりますので、できれば2回接種を考慮ください。(麻疹・風疹混合ワクチンなら1回で接種できます)

日本脳炎の予防接種はしなくていいの?
日本脳炎のワクチンは副反応が多くでたとのことで2年前から延期になっています。延期期間が長くなると病気自体がでてくる可能性は否定できないのですが厚生労働省から新たな勧告は行われておらず、そのためワクチンの供給も少なく、現時点では海外赴任など特殊な場合を優先して接種させていただいております。接種をご希望の際にはご相談ください。

日本の予防接種ってどうなの?
麻疹の流行で認識いただきたいのは”日本は明らかに予防接種については遅れている”ということです。予防接種に熱心なアメリカでは日本の3倍程度のワクチンを接種しています。韓国や中国でも日本より多くの予防接種を行っていて日本は先進国はもちろんのことアジアでも最も遅れている国の一つです。予防接種は自身を守るだけではなく、社会全体を守る手段であることを保護者のかたもご理解いただければ幸いです。

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